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紅宝石少年

ゆきやの読んだ本や行った場所を紹介する気ままブログ。ブログタイトル「紅宝石少年」は、大すきな漫画カストラチュラから。

egHOST×SAI 新約熱海殺人事件 感想

感想文

演劇情弱者なので、つかこうへいを知らない。

知らないのに、egHOST×SAIの「新約熱海殺人事件」を東京まで見に行った。

俳優が目当てだが、何かすごいものを見せてくれるのではないかと期待して。

そしてその期待は裏切られなかった。

赤盤:モンテカルロ幻想

女性だけで構成された劇である。コメディからのライブからのシリアスからの大団円からの悲劇(見た人はわかる)。

それが目まぐるしく展開される。息もつけず、ワクワクした。

特に木村刑事は貴族のようないでたちで格好良い(女性だと知っているのに!)、衣装チェンジの貴族少年装、赤いドレスも注目すべきところ。傲岸不遜、ニヒルで、大げさな態度、おいしいところをどこまでもかっさらっていくヒーロー。存在自体が卑怯だった。惚れるしかない。

水野秘命子は、その名の通り、胸に熱い命を秘めていた。美しく愛らしく、純愛を貫いた一途な女性。ゴスロリ衣装もドレス姿も素敵で目の保養である。感情移入していただけに、ラストは切なく胸を焦がした。

二役の山口アイ子。彼女もまたすっとして、美しい人だった。長崎弁がほろっと口から出てくる。やわらかで切ない微笑みが美しかった。

熊田魅火は、激情を抱えたこれまた格好いい女性だった。キリッと凛としていて、男らしい。だから口紅の下りで、「女」が出たときのギャップがなお引き立ちよかった。

彼女も悲劇の人であった。

心友を殺した大山鎖知恋。

アクション、シャブにより陽気にトラップした姿、友人との切ない邂逅、そして激情。ほとばしるような演技が見事でした。

真実は、あれで、よかったと思う。救いじゃないけど彼女なりに救われたらいいと思った。

降ってくる赤い紙吹雪、流れるpopミュージック。すごくきれいにまとまった面白い劇だった。

 

白盤:THE LONGEST SPRING

赤盤で主役を張った木村刑事とは対照的にこちらの木村刑事は動かないしゃべらない。ただそこにいるだけ。borders(SAIさんの2015年の作品)に客演していた時のような激しさは一切なく拍子抜けしたほどだ。

熊田と水野がいがみ合うように会話する。ハラハラして空気がぎすぎすする…

そこに現れる大山。

なんかもう登場した瞬間に大山オンステージ。作品の雰囲気をがらりと変えて、甘酸っぱい青春群像劇を召還してしまった。体当たり演者和田崇太郎、恐るべしである。

また、主役を張った水野の口の悪さが良い。ズバッとしていて、格好良い。どうしてこの劇に出てくる女たちはこうも格好良いのか。憧れてしまった。

熊田も喜怒哀楽をくるくると表現し、なかなかに見ていて楽しい。

特筆すべきはラストをかっさらった今まで彫像のように動かなかった木村刑事である。おいしいとこ取りすぎだろう!(万歳!)

 

2作品に出ていた柔道部の皆様お疲れさまでした。新鮮な驚きと笑いとを動きで見せてくれてよかったです。

 

黒盤:サイコパス

狂っている。大いに狂っている。

木村刑事がサイコパスとパンフレットに記載されている時点で、前の2作品とは全く違うのだ。そして舞台が開く。赤盤・白盤の雰囲気が一気に消え去り、SAIの空間になった。

熱海殺人事件のキーワードを要所要所押さえながら、全く違う作品に仕上げていた。私たちの世代を賑やかした透明な存在としての14歳や3.11などに関する社会風刺もどんどん盛り込む。重苦しく切なく、やりきれない。けれど凝視してしまう。そんな劇だった。

普段は温厚な倉垣さんが、舞台上では別人である。この豹変にはいつも驚かされる。

麻宮さんは前髪で顔を隠すことなく、まっすぐ前を見据えていた。何か心境の変化でもあったのだろうか。

水野朋子は大きなものを背負わされていた。父からの何かしらかの重圧、木村刑事の過剰な愛、前半はおどけていたけれど、話が進むにつれ苦しそうだった。

水野ハナ子は妖艶な美女から「母」まで見事に演じていた。母と大山のシーンは悲しく胸を打つものがあった。

熊田はフリークスだった。それから人間に戻って、大山の二役。演じ分けが素晴らしかった。

榊原は、真正のクズを見事に演じていました(褒めている)。なかなか人間ここまでできませんよ。

 

3作品とも全く違って面白い。

演出家の数だけ生まれる熱海殺人事件。解釈が興味深かった。

 

egHOST×SAIの皆様、素敵な1日をありがとうございました!