紅宝石少年

ゆきやの読んだ本や行った場所を紹介する気ままブログ。ブログタイトル「紅宝石少年」は、大すきな漫画カストラチュラから。

炎の蜃気楼昭和編『涅槃月ブルース』 感想

えー。この巻を入れて残すところあと2巻となりました。炎の蜃気楼昭和編『涅槃月ブルース』の感想を。

 

 

【あらすじ】

織田潰しに奔走する景虎。一方、景虎の命で直江は美奈子と阿蘇を目指す。景虎に惹かれる者同士、共感めいた想いも抱くが複雑な気持ちは変わらない。逃避行を続ける二人は、次第に織田方に追い詰められ……。

集英社サイトより

 

【感想】
あー、この巻のありとあらゆる衝撃を、リアルの友人と分かち合えないのがすっごいもどかしいです。なぜみな卒業していったのだ…。


前回に引き続き、本編4部を思わせるような、信長VS景虎景虎の願いを背負って逃避行する美奈子と直江、その複雑な心中。長秀のイライラ。晴家の心配。色部さんの気遣いなど、あーーーーーーー! ってなってなります。ちょっとだけ癒しポジション、高坂 笑。

後要所要所で、あ、これ本編で見たやつ! とか、邂逅編から懐かしの君たち登場ありがとうとか、このすれちがいがぐぎぎぎぎとか、もう、心がひりひりします。

ああ、これぞ水菜節。幾年月を経てもなお、生きた言葉で読者をえぐる(すっごい褒めてる)水菜節。

でも、本編を知っているからこそ、あー本編のこの思いは、ここで生まれたのねとか、昭和編の直江では、加瀬さんを受け止めきれなかったよねとか、冷静に考察する自分も出てきて、本編4部ラスト付近でただただ号泣していたころとはまた違う面持ちで、昭和編終盤を見つめている感じです。

そういえば前巻で鉄ちゃんが魔王の種要員、と言っていた人がいましたが、正解していてすごいなぁ。
そして、気になる美奈子と直江と景虎様ですが、あれですよ。この時の直江が本編2部の直江だったら、こんなにこじれなかったのかなぁと。

景虎様の純粋な思いと、どうしようもない弱さと孤独を、知っていた2部以降の直江なら、加瀬さんを信じてあげることができたかもしれない。

けれど、一部を経てようやくあの心境にたどり着いた直江なのだから、昭和編でそこまで至っていないのは仕方ないことなんですよね…。本編尊すぎる…。

今回の景虎様の告白は、本編でなぜ高耶さんが記憶を持たなかったのかとか、直江をどれだけ思っていたのか、とかがストレートに描かれていてよかったですけれど、それもこれも、直江本人の前で言ってあげましょうよ…というのが多々あったので、昭和編の二人は、ザ・すれちがい。だったんでしょうね。
直江と景虎さまだから駄目だったのかな。ただの尚紀と加瀬なら、よかったのかな。勝者だとか敗者だとかいう型から離れて、お互いを想っていると口にして。愛していると、言葉にして。それができなかったから昭和編なんですけれど。

あと、美奈子に関して、美奈子に換生した景虎様が、直江に「おまえだけは永久に許さない」っていうの、あれ、どうやら、織田への寝返りとか、美奈子を寝取ったとかそんなのじゃなくて、「オレを愛しているはずのおまえが、美奈子を愛しているといった」ことが許せないのかなと。行為中の直江の「愛している」というセリフは心の中の景虎様へ向けられたものでしょうが、美奈子の記憶を継承したら、それは美奈子に言われているセリフのようにしか受け取れないわけで、そうであるなら、許せないのは、「自分というものがありながら美奈子を選んだ直江を許さない」なのかなぁ、と。

いや勝手な憶測ですけれど。最終巻が出たらそのなぞも丸っと解決するんでしょうね。

でもその仮説が正しければ、こんなに愛されて、直江幸せだったねと。いいたいです。はい。

213ページの「直江が愛しているのは」の答えって何だったのだろう。景虎でも美奈子でもなければ、直江自身ということでしょうか。

とりあえず残り1冊。全身全霊を賭して、見守る所存です。そして、環結する。環結っていいことばだなぁ。また本編読みたくなってきました。

 

ここまで読んでくれた方向けに、涅槃月ブルースで、私が好きなセリフを載せときます(長いよ!)。

 

 自分のものにならないのなら、誰のものにもならないでくれ、と。
永遠にならないでくれ、と。
p.23

 (あなたを手に入れたい……)
直江は両手で顔を覆った。
(俺だけのものにしたい!)
p.41

 「死は、安らぎなのですか」
「そうであってほしいと、私は願うよ」
p.47

 (おまえじゃなきゃ、だめなのは……このオレなんだよ)
p.76

 おまえでなければだめなんだ、直江。
オレには、おまえじゃなきゃ駄目なんだ。
p.77

 自分が万一、この世界から消えたとしてもーー。
生きて生きて、生き延びろ。
そして、美奈子を頼む、と。
(おまえには生きていてほしい。直江)
(おまえは、オレの片割れだから……)
p.78

 「動いている人間には、できない。止まっている人間だけが、真実を凝視できる。それがいつか、君を取り巻く大切な人たちを、救うことになるかもしれない」
(中略)
「見つめるとは、想うことだ」
p.166

 消えてしまえ。消えてしまえ。悪夢。
おまえになりたかった。できることなら俺がおまえのようになりたかった。
俺があのひとを救いたかった……!
p.185

 あなたとひとつになりたい。あなただけが欲しい。あなただけが。あなただけを。
あなたをーー。
「愛しているんだ!」
p.187

 ーー信じてる。おまえを。
ふたりの瞼に浮かぶのは、景虎の面影だ。
ーー必ず迎えに行くから。
p.197

 「頼りにしてるんだ…。なのに、なかなか伝えられない」
(中略)
「オレも子供に戻れたら、一からやりなおせるんだろうか」
p.203

「その感情は、オレたちには危険すぎる。だから押し殺すんです。押し殺して修正するんです。あるべき型にはまって安全を保つんです。そうでないと壊れる」
「壊れる? なにが? おまえたちふたりが?」
「オレがです」
(中略)
「その感情に身も心も明け渡したら、……オレ自身が壊れる」