紅宝石少年

ゆきやの読んだ本や行った場所を紹介する気ままブログ。ブログタイトル「紅宝石少年」は、大すきな漫画カストラチュラから。

折口信夫がにわかに熱い件

えー、ここ最近折口信夫が熱いです。

もともと、大塚英志著の木島日記で折口信夫を知り、キャラクターとしての彼を愛でていました(顔に痣があるとか民俗学者柳田國男と双璧だとか同性愛者だとか)。 しかして木島日記では架空の存在木島平八郎の方にどうしても目線がいきがちで、真摯に折口信夫に向き合うことはなかったのです。

月日は流れ、月に吠えらんねえという漫画に出会いました。作者が近代文人や詩人の作品から出る印象を擬人化し、そのキャラクターたちが架空の□(詩歌句)街を舞台にいろんな事件を繰り広げるという、新しめの漫画です。

この漫画を読んだ時の衝撃は半端なかったです。 なにせ、主人公の朔(萩原朔太郎フューチャー)をはじめどのキャラも個性的過ぎるほど個性的。 このキャラのモデルは誰かしらとか考えるのたのしい。 引用される詩の元を探すのがすごく面白いし、巻末の参考文献の量のおおさに圧倒されます。

で、何が折口信夫につながるのかというと。 月に吠えらんねえに詩人の釈先生が出てきます。 折口信夫は詩人もしていて、そのときの号が「釈迢空」なんですね。 ふてぶてしい神経質な隻眼の(顔に痣があったというのを眼帯にしたんでしょうね!)釈先生はまさに折口信夫の作品から生み出されたキャラクター。 折口信夫を少し知っていたので、すごくときめきまして。しかも釈迢空を少し紐解くとアララギつながりで北原白秋斎藤茂吉と関係があるんですよ。で、月に吠えらんねえで白さん(北原白秋作品を擬人化)と言葉を交わすシーンを見るだけで、わき上がる情動。 なんだろうね、これ。

木島日記をお読みの方ならご存知かもしれませんが、折口信夫がオカルト事件に巻き込まれている間、不在の弟子「藤井春洋」の存在がしばしば記述されます。 木島日記もどき開口では、木島平八郎と藤井春洋は表裏一体の存在だったみたいな記述になっていますが(もどき開口は一体いつ本になるのだろうね)、大事なのは、この「藤井春洋」という存在。

藤井春洋は、折口信夫の住込みの弟子で、伴侶(折口信夫と約20歳差)で、戦争時に硫黄島に着任し戦死します。戦地で(多分)、折口信夫の養子になります。折口信夫死後は、石川県に折口信夫が建てた墓に一緒に入っているとか。

伴侶でとさりげなく書きましたが、折口信夫の同性愛の相手だったというのが公式の記述にあり、戦地に赴く前に折口信夫の希望で養子縁組しているので、同性愛としてはガチだったと思います。 まぁ、肉体関係の如何というより、精神的つながりのために籍を入れたと勝手に空想しています。

その春洋さん。 月に吠えらんねえでも出てくるのですよ。 「はるみさん」という名前で。しかも、犀さん(室生犀星作品を擬人化)が硫黄島に旅したときに話し相手になるんです。 室生犀星が書いた「わが愛する詩人の伝記」のなかにも春洋さんは記述されていて、どうやら交流があったらしい。 死後、折口信夫が出版しようと奔走した『鵠が音/中公文庫/折口春洋』に硫黄島から折口信夫宛てにしたためた手紙が載っているのですが、戦地の過酷さを表記しながら、折口信夫を案じることを決してやめないという。戦地にて大切な人を思う気持ちというのが切なくて。

で、余計にたぎりました。

木島日記のときには、国文学者で民俗学者で同性愛でへなちょこしてるおじさんだなぁという勝手なイメージを折口信夫に抱いていたのですが、月に吠えらんねえ読後は、これは違うぞ、と。 何が違うかわからないから、改めて折口信夫について調べなくては、となったわけです。 はい。

今のところ、折口信夫の本自体にはあまり興味がなく(死者の書は読みましたが理解できず。抄だけだったからかしら)、折口信夫の弟子が書いた評論を読んでどんな人だったのだろうかと考えるのが今一番楽しいです。 はい。

というわけで、ぼちぼち折口信夫関係本を読んで行っている次第です。はい。

●読んだ本 折口信夫 魂の古代学/角川ソフィア文庫/上野誠 わが愛する詩人の伝記/中公文庫/室生犀星

●読みかけの本 鵠が音/中公文庫/折口春洋

●これから読む本 わが師折口信夫/朝日新聞社/加藤守雄 折口信夫の晩年/中央公論社/岡野弘彦

●気になる本 慶應本科と折口信夫 いとま申して2/文藝春秋/北村薫 折口信夫/講談社/安藤礼二