紅宝石少年

ゆきやの読んだ本や行った場所を紹介する気ままブログ。ブログタイトル「紅宝石少年」は、大すきな漫画カストラチュラから。

大森義憲さんの書いた「戦時中の釈迢空」というコラムが私にとっても響いた話

山梨に出かけたツイッターのフォロウィーさんが
自身の調べている資料の中に、たまたま折口信夫について書いてあるものを
見つけ、私が春洋さんが好きなことを覚えていてくださって、
後日、コピーを送ってくださった。


山梨の同人「中央線」というものに、
大森義憲という山梨県民俗学者が「戦時中の釈迢空」と題して、5編ほど戦時中の折口信夫の様子をしたためているものだ。


(一)(二)編には、私の個人的熱狂の相手、藤井春洋氏も描かれている。
その描写が実に面白いのである。
大森義憲氏は、加藤守雄氏の著作『わが師折口信夫』に少しだけ出てくる。
慶応出にしては、あまり活発な方ではなかったようで、
朴訥というか、暗そうな方だったとか。
その姿が春洋さんには苦手だったようで(わが師による)、2度ほど外出先で折口父子に遭遇した大森氏がどうしていいかわからず、折口師弟のあとをついて出石の家に来た時に、2度とも「へんな奴」と春洋さんが折口信夫にかみつく感じで、言ってしまう。

しかしその、その大森氏の折口師弟の生活の描写が、とても細やかで、とても興味深いのだ。
家を訪ねたら、雑煮を出してくれる春洋さん、
折口信夫と口論しながらそれでも料理を作ることをやめない春洋さん(折口信夫を「しゃあくだ」とののしるのがなんだかおかしい)、
それでいて穏やかに食卓を囲んだり。
朝からお弁当のお寿司を作る春洋さん、
折口信夫の靴ひもを結ぶ春洋さんや、折口師弟が枕を並べて寝ていたこと、
まるで、お母さんみたいにふるまう春洋さん、
春洋さんの養子縁組時のお話、春洋さんの結婚相手話(かなわなかったけど)、
春洋さんが召集されたのちの、折口信夫の姿など、とても生き生きと描写されている。
ほかの資料と照らし合わせて、春洋さんがタバコを吸っていたのではないかということも分かった。
わが師折口信夫に描かれるちょっと冷たくてつれない春洋さんに描写は近いのだけれど、戦時中といえば春洋さんもいわゆるアラフォーの殿方である。
室生犀星が「わが愛する詩人の伝記」で描いた、室生家に遊びに来た頃の若いこちこちした春洋さんからはそれなりに年月が過ぎたようにも思う。
あと、家族だからこういう罵り方ができたのだと、折口師弟の心の距離の近さがすごく味わえる素敵な資料でした。

素敵な資料を見つけたくださったフォロウィーさんに感謝です。

ちなみに、こちらの資料、山梨県立文学館に収蔵されております。