紅宝石少年

ゆきやの読んだ本や行った場所を紹介する気ままブログ。ブログタイトル「紅宝石少年」は、大すきな漫画カストラチュラから。

桜風堂ものがたり 感想(ネタバレを含みますので未読の方はご注意ください)

『桜風堂ものがたり/村山早紀/PHP研究所』の感想を。

 

桜風堂ものがたり

桜風堂ものがたり

 

 

【あらすじ】
百貨店内の書店、銀河堂書店に勤める物静かな青年、月原一整は、人づきあいが苦手なものの、埋もれていた名作を見つけ出して光を当てるケースが多く、店長から「宝探しの月原」と呼ばれ、信頼されていた。しかしある日、店内で起こった万引き事件が思わぬ顛末をたどり、その責任をとって一整は店を辞めざるを得なくなる。傷心を抱えて旅に出た一整は、以前よりネット上で親しくしていた、桜風堂という書店を営む老人を訪ねるために、桜野町を訪ねる。そこで思いがけない出会いが一整を待ち受けていた……。

 一整が見つけた「宝もの」のような一冊を巡り、彼の友人が、元同僚たちが、作家が、そして出版社営業が、一緒になってある奇跡を巻き起こす。『コンビニたそがれ堂』シリーズをはじめ、『花咲家の人々』『竜宮ホテル』『かなりや荘浪漫』など、数々のシリーズをヒットさせている著者による、「地方の書店」の奮闘を描く、感動の物語。
PHP研究所サイトより

【評価】
★★★★☆

【感想】
この本、かなり贅沢です。
・廃校に居ついた子猫の話
・書店員たちが本を売るためにどれだけ努力しているかという話
・万引きを機に10年つとめた書店をやめ、小さな町の書店員になった話
・潰れそうになった町の書店が息を吹き返す話
・義父から虐待を受けた子供が祖父の家で救われる話
・過去に描いた絵を認められなかった女性が、ある物語を絵にしたところ、みんなに認めてもらえた話
・ネット上でやり取りしていた相手が友達の好きな人で、それを明かせないまま応援するなんとも切ない恋のような、話
・無名作家の本を売ろうという運動が、1書店から始まりいろんな人の心を動かした話
シナリオライターと女優の邂逅の話
・無名作家が未来を夢見る話
・雰囲気の似た作家と書店員が実は血でつながっていた話
と、どんだけ話をぶち込んでくるのかと。
(ざっと箇条書きにしましたが、まだ足らないぐらいです)

一個一個のドラマが私の喜怒哀楽を刺激し、気が付くと涙を流していました。
涙は哀しいから、嘆くから流れるとお思いですか? 温かかったり嬉しかったりしても流れるんですよ。くっそう。

これだけのエピソードを盛り込んだ上に、破たんさせることなく、全てのエピソードを帰結させるのは、やはり村山先生がストーリーテラーだからでしょう。普通なら破綻していても仕方ないかーレベルですが、破たんするどころか、まるっとまとまっていて、goodjobすぎます。

いつものふわっとファンタジーでなくて、社会風刺さえやってのけた(偽善者たちの正義のはき違えのシーンでは怒りに震えて読んでました)、書店のリアルな現状も見事に描ききっている(万引きがどれだけ書店の命を縮めるかなど)、これは名著です。

それでいて、人の優しさや温かさはほかのシリーズと寸分たがわず鮮やかに描く。
主要登場人物たちがみんな幸せなところに着地して終われたのが本当に良かったなぁと。
なので、読後はすごくスッキリ爽やかです。

これは奇跡のお話ではなくて、人の努力と願いと信念のお話なのだと、そう思いました。
作中に出てくる百貨店のショーウインドウとかブックカバーとかが現実に見てみたかったなぁ。