紅宝石少年

ゆきやの読んだ本や行った場所を紹介する気ままブログ。ブログタイトル「紅宝石少年」は、大すきな漫画カストラチュラから。

死の泉 感想

最後の大どんでん返しに、びっくりポンだった『死の泉/皆川博子/ハヤカワ文庫』の感想を。

死の泉
死の泉
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早川書房 (2013-02-28)
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【あらすじ】 第二次大戦末期、ナチの施設〈レーベンスボルン〉の産院に端を発し、戦後の復讐劇へと発展する絢爛たる物語。去勢歌手、古城に眠る名画、人体実験など、さまざまな題材が織りなす美と悪と愛の黙示録。1997年の「週刊文春ミステリー・ベスト10」の第1位。第32回吉川英治文学賞受賞の奇跡の大作! (ハヤカワオンラインより

【評価】 ★★★★☆

【感想とネタバレと考察】 kindleで安かったので購入。トマトゲームのように生々しかったらどうしようと思ったのですが、話はナチス時代のドイツを舞台にした、幻想耽美小説で、私的にとても興味深く読みました。 物語も読みやすく、第2次世界大戦のドイツのことを知っていたらすらすら理解できましたし、カストラートとか、双子を接合するなどという、とんでもは耽美ものにはありがちなので(孤島の鬼とか、カストラチュラとかね)、普通に読みました。

ところがどっこい。 最後のあとがきで、翻訳者が出てきて、あれ?ってなったんですよ。皆川博子が書いたのではなく、野上晶という人が翻訳したことになっている。

3章のその後が読めるのかしらんと思ってあとがきを読んだらとんでもない! 2章以降がすべてぶっ飛ぶ凄い内容で、しかも確証が得られないから真実は、皆川先生の胸のうちですよ。やられた!

私の勝手な考察ですが、 1945年の空襲で、グレーテ、フランツとエーリヒ(この時死亡)が生き別れる。 クラウス、グレーテ、ミヒャエルが渡米。2人目のミヒャエルが生まれる。 15年後、クラウス一家、ドイツに帰還、しかし、クラウスはアメリカの秘密に近づいたため、抹殺される懸念があった。 そんななか、グレーテの元恋人の名「ギュンター」をかたって、フランツが現れる。 ギュンターがフランツであることを知ったクラウスは、彼を家に招いた際、犬をけしかけて、フランツを殺害。 そして、3章の廃城のクラウス暗殺計画をクラウス自身が利用して、ブリジッテとの息子を亡き者にし、かつての部下を殺し、アメリカからのお目付け役も殺し、自身を殺して、ギュンターになりすますことで、クラウスはギュンターとして、何におびえることもなく、2人のミヒャエル、グレーテを所持し、安穏と彼の美を追求するために生きる。 グレーテが途中まで書いた物語を利用、改変し、ギュンター(になったクラウス)がそれを『死の泉』として出版。過去を塗り替えた。

と、あとがきに書かれたグレーテが、ギュンターが家を訪ねてきたとき、彼をフランツと呼んだこと、クラウスの犬がギュンターの足でなく首筋を噛んで絶命させた(と思われる)記述から想像しました。 エーリヒと名乗る青年(ミヒャエル)がどの段階からクラウスの側にいたのかは、わかりません。2章3章がそもそも事実でないなら(小説に事実というのもおかしな話ですが)、残された言葉から推測するしかできないのです。 でも、生きているギュンターの人物描写はクラウスそのものなので、入れ替わったんだろうなぁというのは確信しています。はい。

しかし、読んでいる3分の2の話があとがき(という名の物語)で、吹っ飛ぶという、すごい大どんでん返しで、え? ええ? どういうこと? と最後まで読んで大いなる謎を突き付けられたので、皆川博子のミステリーは半端ないな、と。

金髪碧眼の美しき子供、カストラート、双子の接合など、耽美モチーフに騙されて、読んだらとんでもない永遠に解決しないミステリだったので、こんな名作! もっと早く読むのであった! くやしい! ってなってます。はい。

あ、考察は私の独断と偏見なので、真実かどうかは知りません。私はこう考えたというだけです。はい。

いやー、面白かったです。