紅宝石少年

ゆきやの読んだ本や行った場所を紹介する気ままブログ。ブログタイトル「紅宝石少年」は、大すきな漫画カストラチュラから。

五條瑛『パーフェクト・クオーツ』小学館文庫 感想

五條瑛『パーフェクト・クオーツ』小学館文庫 感想を。 

パーフェクト・クオーツ 北の水晶 (小学館文庫 ご 26-4)
 

 【あらすじ】

日本と北朝鮮、二つの国に二人の子を遺して男は死んだ。
米国国防総省ペンタゴン)直轄の情報機関に所属する葉山隆(はやまたかし)の元に、男から52本もの古いカセット・テープが届く。
録音されていたのは男の告白。北の情報機関〈三号庁舎〉の一員として知るかぎりのすべてを語った内容だった。
その中で、北の完璧なるスパイ“石英(ソギョン)"の存在が明かされる。そして大がかりな情報網を統べるというもう一人の大物スパイ“カタツムリ"。

北が作った精巧な偽ドル紙幣“スーパーK"の流通を阻止しようと米韓合同で行われたソウルでの摘発作戦は、米韓に多数の死者を出すというさんざんな結果に終わったが(前作)、その原因は、米韓の情報網に開いた巨大な穴からの情報漏洩だったという。
葉山はその巨大な穴に、石英とカタツムリが関与していると見て、調査を始める。

一方、米日の経済制裁に反発して、北朝鮮は突然、国境近くの経済特別区・開城(ケソン)工業団地を封鎖した。
巨額の投資をしていた京星(キョンソン)グループの代表・重貞高平(しげさだたかひら)は、一千億ウォンに及ぶ損失を取り返すべく、米日にある取引を持ちかける。
その内容とは、北の後継者の一人だった“ヨハン"亡命の手引きだった。
ヨハンは、北朝鮮が国を挙げてアメリカを標的とする大量殺戮兵器を開発しているという確実な証拠を握っていた――。

「他の血を残しておけば、それは必ずや新たな災いを呼び起こす。誰かがその血を利用しようとするからだ」
日本人の想像を絶する北朝鮮という国の実態。
米韓の隙を突いてマレーシアの空港で起こる“ヨハン"暗殺事件。そして切り札をなくした取引の行方は?

小学館文庫より

 

【感想】

待望の、鉱物シリーズ第3作。
2作目登場以後、番外編が多く出ましたが、やっと本編の続きを読むことができました。令和ありがとうございます。
スパイ小説というより、推理ものを読んでいる感じで、主人公葉山隆が、前作に出てきたスパイ・チョンから残されたテープをもとに、北のカタツムリというスパイについて、調べていく過程で、謎を多き葉山の父についての話が出てきたり、韓国財閥の社長から持ち込まれた、北の前指導者の息子ヨハンの亡命話に身を投じたりと、物語が大きく動くのを感じました。
北の前指導者の息子は史実でも暗殺されていますが(ついこないだのようでもう結構時間が経ちました)、その背景にどんな陰謀が動いていたかを、元防衛庁情報・調査専門職であった作者の観点から分析され、物語になっており、それが的外れでも何でもないところが、やはり、情報を扱う方の未来予測力のすごさというか、そういう思考のプロセスに至れることに感心します。

物語は、このパーフェクト・クオーツと対をなす『碧き鮫は野に放たれ』そして、半島編4部作の最終巻『猫目石』へと続くそうです。謎多き、葉山の父のなぞ、葉山に美しい容貌を残した謎多き母について語られる日は来るのでしょうか。

作者はあとがきで、物語を出版することは、棺桶を開く行為だったと述べていますが、こんなにも私の心を震わす物語が、棺桶にしまわれているのは、もったいない。ぜひ、小学館様に頑張っていただいて、先に述べた2作と、できればシリーズ第1作『プラチナ・ビーズ』を小学館文庫様の形式で全巻揃えたい…! という御恐れた夢を見ております。