紅宝石少年

ゆきやの読んだ本や行った場所を紹介する気ままブログ。ブログタイトル「紅宝石少年」は、大すきな漫画カストラチュラから。

『折口信夫 秘恋の道/持田叙子/慶応義塾大学出版会』感想

折口信夫 秘恋の道/持田叙子/慶応義塾大学出版会』の感想を。

折口信夫 秘恋の道

折口信夫 秘恋の道

 

 
【本紹介】
学問と創作を稀有なかたちで一体化させた、折口信夫
かれの思考とことばには、燃えさかる恋情が隠されていた。
大阪の少年時代から、若き教師時代、そして晩年まで、
歓びと悲しみに彩られた人生をたどる、渾身の評伝/物語。

「折口の主題には恋が大きくそびえ立つ。そのことばの隅々にも恋情がたゆたう。
思考にふくよかな実感と肉感がかよう。人生の大半を埋め尽くす、
烈しく純な恋慕の経験の影だ。
ならばぜひとも書かなければなるまい、折口信夫のひそかに望んだ折口信夫論を。
恋愛小説の形をとり、折口信夫の学問と創作の鍵をあきらかにする論を。」(「あとがき」より)

【感想】
出版を偶然知ってから、出版されるのをとても心待ちにしておりました。

序章からグッと引き込まれます。描写が細かく、想像しやすい。まるで、その場にいて、折口信夫と彼がかかわった人々の足跡を眺めているかのような錯覚に陥る。
折口信夫の恋多き人生。藤無染や辰馬桂三、伊勢清志、藤井春洋は知っていたが、それ以外にも本当にたくさんの人に恋し、その恋を失っていったのだなぁとしんみりしました。
さらりさらりと、文壇詩壇で有名な名前が出てくるのに、お! っと嬉しくなりました。
登場人物たちの交差がとても楽しく、ああ、この詩人が、この作家がこういう風に絡んでいたのかと、感心ひとしきり。本当に、いろんな資料を総合的に集めて、解釈し、物語を紡いだのだろうと思いました。とても大変な苦労だったと思います。その集大成として、この本をとても楽しく読ませていただきました。

同性愛のくだりの書き方も、うまい具合に書いているなぁと(両性具有、姫=折口信夫にはなるほどと)。伊勢君に関しては若干赤面シーンもありましたが。

特に私は春洋さんびいきなので、20章21章はとても感じ入って読みました。春洋さんと折口信夫タブノキの下での邂逅のシーンなんて、何かのドラマを見ているみたい! ときゅんとしました。情景描写が本当に美しいです。

春洋さんが病に臥せった時にかいがいしく看病する信夫先生とか好きすぎる。
春洋さんに関しては、硫黄島着任時中尉と書かれていましたが、没後では…? という疑問が1つありましたが。
腕がなくても足を引きずっても、帰ってきてほしかったのくだりは泣きそうになりました。書簡からとったのでしょうか。だとしたら相当な読み込み具合です。
折口信夫の最後の恋が、柳田国男だった、という説は、グッときました。田山花袋よりも、うまく書けるという自負がとても崇高なもののように思えました。叶わぬ夢でしたが。

全体的にすごく読みやすく、折口信夫という人物を知るのに最適な本だと思いました。
出会えてよかったです。ありがとうございました。